最期は自分の好きな場所で~在宅医が伝える人生会議~
最期は自分の好きな場所で
2019年11月17日(日)かごしま県民交流センターにて、NPO法人生き生きサポートシルバーエイジ主催の講演会がありました。
講師は、きいれ浜田クリニック院長の濵田努先生。(別名:パワポの魔術師)
「自分の好きな場所とは、家でも病院でも施設でもいい。自分が穏やかになれる場所であれば。」と、穏やかな口調なのに眠気を感じる間を与えない濵田マジックが始まりました。
人生会議とは?
「人生とは何か?」いきなり哲学的な問い。
「生まれてから死ぬまで」「今まで歩いてきた道とこれから歩く道」など参加者から声が上がりました。
人生は選択の連続で、その選択が人生を作っています。他の可能性は永遠に存在しません。だから”選ぶ”ことを意識する。
病気にならないことは選べないけれど、病気との向き合い方は選べます。病気に支配されたり、病気に飲まれることは、残念で辛いこと=悲劇です。
人生会議とは、自分の人生の最期を考え医療・ケアを話し合うこと。人間の尊厳を守るために選ぶことです。
終末期に私たちが選べる場所は?
終末期に過ごす場所として、①自宅、②病院、③施設それぞれについて良い点と悪い点を参加者同士語り合いました。
↑自らマイクを持って参加者のもとへ駆け寄る濵田先生。
最期を自宅で迎えるには3つの覚悟が必要です。
①本人の覚悟、②家族の覚悟、③医師の覚悟。この3つが揃って初めて可能になります。
おひとりさまなら、①本人の覚悟、②医師の覚悟の2つだけでよく、実際に鹿児島市喜入では独居で看取られた方が数名いらっしゃるそうです。一人だからできないということはありません。
在宅医療とは?
在宅医療は、①訪問診療(定期的な訪問診察)と②往診(患者の要望に応じた訪問)で、通院が困難な方が対象。
通院が困難な方とは、①日常生活の行動性が低下した方、②神経難病患者や外傷後遺症患者などの小児・若年の患者、③悪性疾患の末期患者です。
在宅医療はどの病院でもできるわけではありません。
在宅医療をしていない病院やクリニックにかかっている場合は、在宅医療ができるクリニック等を紹介してもらわなければなりません。(自分のかかりつけ医がどこまで対応してくれるのか確認をしておくと安心)
・・・私の父は、今年の2月末から3月に亡くなるまで在宅医療を受けました。昨年から入退院を繰り返していた病院から紹介された系列の往診クリニックの先生が、訪問診療と往診をして下さいました。
↑このブログの”家族”カテゴリー、食べものネタや真面目なネタよりも赤裸々に書いていて、今読むとちょっとおもしろい(笑)。
在宅で終末期を過ごす場合に知っておくべきこと
呼吸が止まっていることに気付いたときに、119に電話をして救急車を呼ぶということは「とにかく助けてください!」というメッセージになります。
希望しなくても、呼吸が止まってすぐだったら、心肺蘇生が行われます。希望しなくても、呼吸が止まって時間がだいぶ過ぎていたら、異状死と判断され、警察を呼び検分をします。
「やめて!」と言ってもやめません。
ではどうするのか?
在宅で終末期を過ごす場合に、呼吸が止まっていることに気付いたときには、訪問看護に電話をかけましょう。 ・・・私の父の場合も訪問の看護師さんに電話をしましたよ。
認知症と長生きはセット販売w
「幸せって何ですか?」「何歳まで生きたいですか?」「あなたは将来認知症になると思いますか?」眠くなりそうな時間帯に質問と話し合いタイムを矢継ぎ早に入れてくる濵田先生。さすが。
幸せを意味する手話(&その由来)、日本人の平均寿命の推移と推計グラフ、そして年齢別の認知症の人の割合のグラフを表示しつつお話しくださいました。
「100歳の認知症の人の割合は100%です。」と衝撃の値が!!!認知症と長生きはセット販売だそうです(;´Д`)
認知症独居の場合
自分の歴史が詰まった愛着のある自宅での生活を強く希望する80代の認知症の男性(要介護4)と、施設に入った方が安全、安心ではないかと思う家族。
本人の想いをどこまで尊重するのか問題。
認知症の人の意思決定では”自律(自分で選ぶ)”が大切で、周りの決めつけはよくありません。
意思決定能力には、自分の置かれた状況を言葉で説明できるか、自分ごととして認識しているか、いくつかの選択肢の良い点・悪い点を論理的に比較できるか、ことばなどで自分の選択を表明できるかの4つの要素があります。
大事なことは一人で決めようとせず、「なぜ?」を繰り返して考え、本人の想いと家族の想いをしっかりと話し合うことが大切です。
病院だけが悪いのか?
超高齢多死社会がやってきます。
1951年には、病院で亡くなる人が12%自宅が82%でしたが、現在は、病院で亡くなる人が76%自宅が8%と逆転現象が生じています。(在宅医療が進んでいるオランダでは、病院で亡くなる人は35%)
がん終末期の方の71%が在宅での最期を希望していますが、実際在宅で最期を過ごされるのは8%。
2025年に向けて医療の世界が大きく変わります。ここ鹿児島県では病院のベッドの数が2013年時点と比べて1万700床減らされ、在宅医療が推進されていきます。病院で過ごしたい、病院に任せたいと思っても受け入れてもらえなくなるかもしれません。
私たち一人ひとりがちゃんと考えていく必要があります。
家族と終末期医療について詳しく話をしている人の割合は3%、一応話した人は40%と話したことがない人の方が多いです。
あなたはどうですか?
死を考えたことはありますか?
死の4つの軌跡
死は他人にしか起きないと脳が認識させているという話や、死に関する哲学者の言葉、お父さまのお言葉などもお話くださいましたが、人には死が必ず訪れます。
生は、死があり、輝く。
私たちはどうしていけばいいのでしょうか。
意思決定をするには?
延命措置をしてほしくないと思っていても伝わりません。延命措置をしてほしくないとリビングウィルを残していても、それがどこにあるか伝えていないと意味がありません。リビングウィルを残し、代理人(家族)に伝え、代理人を決めていてもその通りになるとは限りません。
自分と家族の希望は違います。
価値観のずれがあるのです。
・・・だから、人生会議。
事前に話し合うことで本人の価値観に寄り添うことができます。
決めなくてもいいから
大事なことは、キーパーソンを中心ではなく、本人を中心にみんなで話すこと。繰り返し繰り返し話すこと。
医療やケアのことだけではなく、「誰を信頼しているの?」「何が好き?」「大切にしていることは?」などを繰り返し、繰り返し。
大切なのは、決めることではありません。意見は変わります。気持ちも変わります。結果ではなく、その話し合いの経過が大切です。
価値観を共有するために、大切な人と話すこと。
「私が大切にしていること」「私が好きなこと」、決めなくてもいいからいっぱい話をしよう。
最後に動画を見て、濵田先生のお話は終わりました。「今日ここに来てよかったわぁ」感あふれる会場の空気に、疲れが吹き飛びました♪(まぁその後、自宅で爆睡したんですけどw)
おわりに
大変お忙しい中講演を引き受けて下さった濵田先生、ありがとうございました!尻切れトンボなブログになってしまいすみません。
一緒に実行委員をしてくださったNさん、みんみん、そして当日の受付をしてくださった会員の皆様もありがとうございました。
・・・ここまで長いブログを読んでみた。いろんなことを知った。「でも、終末期にまつわる話はなかなか切り出しにくいよ!話し合うきっかけがないよ!」と思ったあなたに朗報。
”縁起でもない話をしよう会”が2019年11月20日(水)19時から21時まで、妙行寺の門徒会館(鹿児島市和田1-4-1)で開催されます。→第9回 縁起でもない話をしよう会
ぜひお越しください。
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